

鍼治療(はりちりょう)とは、東洋医学に基づく伝統的な治療法で、髪の毛よりも細い金属製の鍼(はり)を皮膚に刺して体の特定のツボ(経穴:けいけつ)を刺激することで、痛みの緩和や体調の改善を図る療法です。中国医学が起源で、日本では「鍼灸(しんきゅう)」として独自に発展してきました。
- 筋肉や関節の痛みの緩和
- 自律神経の調節
- 血流の改善
- 筋肉の柔軟性を高める
- 免疫力を上げる
- 快楽物質を出させる

『鍼は痛みを抑える仕組みのスイッチを入れる』
痛覚は他の感覚と異なり順応しないという特性を持ちます。簡単にいうと慣れないということです。痛みが持続すると精神的ストレスや食欲が落ちるなどの好ましくない反応を起こすため、人体には痛みを抑える仕組みが存在します。鍼の刺激は感覚神経を介して、痛みを抑える仕組みのスイッチをいれる「β-エンドルフィン」や「ダイノルフィン」などの物質を放出します。結果的に痛みを感じにくくなります。

『鍼はホルモンを介して自律神経の調節をする』
自律神経は興奮しているときに働いている「交感神経」とリラックスしているときに働いている「副交感神経」に分けることができます。この2つの神経の調和がとれていない状態をいわゆる自律神経失調症と言います。症状としては動悸、立ちくらみ、ふらつき、発汗過多、血圧上昇、下痢や便秘、片頭痛、肩こり、手足の冷え、疲れやすいなどです。鍼の刺激は内分泌系(ホルモン)に働きかけることによって自律神経を調節することができます。

『血管は体のライフライン』
血液は酸素や栄養をたくさん含んでいます。人は酸素を吸わないと生きてはいけませんが、細胞も同じです。血液が途絶え細胞に酸素を供給できなければ細胞は死んでしまいます。
鍼の刺激は感覚神経を介して血管拡張作用を持つ物質を放出させます。結果的に血流量が増え細胞が活性化されます。

ストレッチをすると体が柔らかくなるのは想像できると思います。熱いものを触ったときに意思とは関係なく手を引っ込めるような仕組みを「反射」といいますが、これと同じようにストレッチの仕組みは筋肉を引き伸ばすことで筋肉が緩むという「反射」を利用したものです。鍼はこの反射を意図的に作り出すことができます。結果的に体の柔軟性が上がり可動域が大きくなります。

『鍼は人体にとって異物』
人体にとって鍼は異物なので、入ってくると異物を除去しようと体の免疫が活性化されます。ウイルスが体の中に入ってきたときに白血球がウイルスと戦って勝つと風邪が治る一連の流れを想像するとわかりやすいのではないでしょうか?定期的に鍼治療を行うことで免疫力が高い状態が続き、風邪にかかりにくい体を作ることができます。

マラソンなどで苦しい状態が続いたときに快感を感じるのは脳内でストレスを軽くするためにβ-エンドルフィンが分泌されるからです。いわゆるランナーズ・ハイという状態です。鍼の刺激はランナーズハイ同様β-エンドルフィンを分泌させるため、疲労感が消え、快楽を感じやすくなります。